都営新宿線の新型電車がツギハギなワケ
春先から都営地下鉄新宿線に新型の車両が走り始めました。が、新型なのは先頭と最後尾だけで真ん中の残りは従来型の車両です。財政難でケチったわけですが、原因はそれだけではありません。
多くの新型電車は実は直流で受け取った電気をVVVFインバータという装置で三相交流に変換して交流モータを制御して走っています。これよりちょっと前の電車はチョッパ装置というので制御しています。新宿線はチョッパ制御です。いずれもモータの制御をするときに無駄に電気を熱にしてしまわないための仕組みでブレーキをかけるときもモータを発電機として発電して電気を返すということをやっています。チョッパ制御よりさらにすすんだ仕組みがVVVFインバータで、最新型の電車はいずれもこれです。
最近にわかに話題になった鉄道の保安装置ですが、都営新宿線ではCS-ATCという装置を使っています。これは運転席に「今は何キロまでの速度で走っていいよ」と出て、その速度を超えるとその速度までブレーキをかけて自動的に速度を制御する仕組みです。
実は新宿線のATCは最新のVVVFインバータとどうも相性が悪いということらしいです。VVVFは電気ノイズを出しやすいのですが、このノイズに今の新宿線のATCが誤動作を起こしてしまう恐れがあるというのです。
この問題を避けるにはVVVF制御の電車を走らせないか、別の仕組みの新しいATCを入れるしかないわけで、そのために現在はVVVF制御の電車は新宿線を走れません。
(そのために直通する京王電鉄の新型車両は新宿線に入れません)
だけどまあ、いつまでもVVVF車両が入れないのは都合が悪いです。とくに京王線の直通用の車両は経年から引退が始まってしまっていますし、あたらしく作る車両はみんな基本的にVVVF車両です。
そこで東京都交通局は新宿線のATCを新しいシステムに入れ替えることにしました。運転間隔も短くできるというメリットもあるからです。
ATCはその装置を先頭車両に搭載します。新宿線の電車も一部は経年で引退しなくてはいけない車両もでてきました。そのため、従来の車両のATCを載せかえるのではなく、とりあえずモータ(と制御装置)のないATC装置の載る先頭車両だけ入れ替えて(ATCは当座新旧両方載せる)、旧ATCでも走れるチョッパ車と組み合わせてを作っています。先頭車両は経年で入れ替えが起こる車両ばかりだけれど、途中で編成を長くしたので中間車両は経年がそれほどでない車両も多いので、新型先頭車と従来型(でも経年は少ない)中間車の組み合わせが合理的なのです。
こうして、経年の少ない車両を(中間車両)中心に従来車を組替えて新ATCの先頭車と合わせたりしながら、全部新型の編成とかも作って、新ATCの対応の準備をしながら設備の工事もします。
こうして準備が車両、設備ともに整ったら新ATCに切り替えます。
新ATCになったら、全部新型のVVVF車両も走れるようになるので、作りおきしていた全部新型の車両も走れるようになるのです。
だけど、やっぱ従来型ももったいないから走りつづけるので、全部新型と、新型従来型ツギハギというのは残ります。(経年の浅い先頭車はATC載せかえをして残るでしょうか?)
今はちょうどその準備段階。車庫にはすでに全部新型の車両が届いていますが、走れないので車庫で寝ています。
ちなみにこの車両、JR東日本のE231系のOEMですね。同じようなOEMとしては東急、相鉄もありますね。
ATCが切り替わったら、京王線の新型車両も直通できるようになります。(準備が必要だけど、もともとそのつもりで作ったので)
関連リンク
東京都交通局10-300形
先頭車だけ新型車・都営新宿線10-300R形
新ATC使用開始目前 都営新宿線
都営新車写真集
<追記>
あとで(5月30日に)全部新型の編成が営業運転してるのを見ました。いわゆる「誘導障害」ってのはないんですかね?ってことになるとこの記事、ウソになっちゃうじゃないですか...(困惑)
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