潰瘍性大腸炎の医療費補助縮小
泣き言を許してください。
これ読んで、しょげました。
特に
国民医療費32兆円の中で、国の難病関連予算は0・1%に満たない。補助打ち切りで難病患者に経済的な痛みを強いる割には、医療費削減効果は大きくない。過剰な薬剤使用や検査など、圧縮できる分野はほかにあるはずだ。補助対象者を絞る場合でも、市町村民税非課税者は、軽、中等症でも自己負担の免除を継続するなど、低所得者に配慮すべきだろう。
(上記リンクより引用)
のくだりを読んだときは、もうやるせない気持ちになりました。
前に、
明日、大腸カメラなので
とか
セカンドオピニオンは自分
とか
言葉のデッドボール
とか
朝起きたら歩けなかった
とか
病院に保健所でもらった書類を持っていかなくてはならなくて
とか書いてますが、これはみんな、潰瘍性大腸炎とその合併症に関する話題で、僕は15歳の春に突然大量に下血して以来、この病気とともに生活しています。
若いころは何度も入退院を繰り返しました。死にかけもしました。
最近はすこしコントロールできている部分もあります。
毎年夏になると大腸にカメラを入れて、細胞を取ってを病理検査に出し、診断書みたいなものを医師に書いてもらって、申請書といっしょに保健所に提出するのです。それで公的費用の助成が下りて(継続できて)医療費の補助を受けます。毎年カメラを入れるのは、潰瘍になった部分にガンが出来る可能性が高いから、ということもあります。
この公的補助も無料で医療が受けられるというものではなくて、所得に応じて自己負担分が決まっています。それで結構な金額。医療費の補助を受けていても、自分1人で所得税の還付を受けるくらいです。
合併症もいろいろ出ていて、特に腸と関係ない合併症として尿路結石、関節炎、壊疽性膿皮症とかがあります。
壊疽性膿皮症とは下肢部分に、紅斑や結節、水泡などができ、急速に潰瘍化し放置しておくと、骨が見えるほど皮膚が壊死を起こしてしまう症状のことです。簡単にいうと、足が勝手に腐って死んでいくということ。
僕はある年の春、朝起きたら突然ひざが曲がらなくなり、そのまま足が腐っていってしまったことがありました。結局、病院でも進行をどうすることもできなくて、ステロイドを投与できるまで時間がかかり(感染症を疑うとステロイドは使えない)、ステロイドもなかなか効かず、腐った組織を切り取る手術を何回かしました。
左足の膝から下の部分の切断も覚悟しました。
結局ある程度ステロイドが効いて、それでもその後1年ほどちゃんと歩けない不自由な生活も送りました。
いわゆる、「弁慶」の部分。今日の状態。
毛のないところが腐って切除したあと再生した部分。
ときどき表面が腐ることがある
効果的な治療はペンタサという薬とステロイドの投与、それから僕がアダカラムと呼んでいる「血球成分除去療法」という特殊な治療です。これはGCAP(顆粒球除去療法)と呼ばれていて、血液ポンプを使って静脈から血液を取り出し、血液の成分のうち、顆粒球と呼ばれる白血球の一部を選択的に除去して、血液を静脈に戻す治療です。1週間に1回、それを5週間を1クール(単位)として、年間2回まで保険診療が認められていますが、公的負担、自己負担、健康保険の負担を合計した医療費の合計が1クールあたり125万円程度(血液ポンプ装置の賃料なども含む)なので、そうそう簡単に受けられません。(高額なので、健保が「劇症」や「重症」のとき以外はいい顔しない、が、劇的に合併症にも効く。)
これは劇的に効くのですが、潰瘍性大腸炎の大腸の症状以外の合併症のみのときは保険適用されないし(慢性関節炎とかはダメ)、僕の場合は脱血・返血用カテーテルがうまく入らないので痛いし、終わった後は頭痛がするし、日中に1時間病院に居なくてはならないので、なかなかやる機会がありません。
さらにいえばいつまでたっても「自己免疫疾患」と特定されないおかげで、合併症などには「根本的な対症療法」(妙な日本語だけど)である免疫抑制剤も使えないし、サイトカイン抑制抗炎症剤も使えず、結局対症療法でステロイドや非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)などをつかって、その場に出ている症状を抑えることしか出来ないのです。
まあ、なんにせよ、普通の生活をするには、努力と費用がかかるわけで、それを国民医療費32兆円の中で、国の難病関連予算は0・1%に満たない。補助打ち切りで難病患者に経済的な痛みを強いる割には、医療費削減効果は大きくない。のに、打ち切られてしまっては、本当に困るわけです....
ちなみに、今週は毎朝、早朝に歩けなくなって、COX2選択阻害薬(非ステロイド抗炎症剤の一種)を飲んでいるのですが、これはこれで、やっとこさ見つけた「効く薬」なんですけどね。
普通の生活がしたいです。
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コメント
多くの膠原病類縁疾患についても同様のことが問題になっています。自己抗体そのものによるものか、ステロイドに所以するものか不勉強にして何とも言い難いのですが。
大学に勤務していたとき(私は精神科の医者です)感情障害を併発した方が他科から紹介される場に立ち会いました。
身体の検査そのものも随分な負荷です、御見舞い申し上げるほかない、ただ思うだけです。すみません。
投稿: anis | 2006.10.20 13:48
anisさん
心強いお言葉、ありがとうございます。
正直に申し上げて、こういう暖かい言葉をかけてもらえることはあまりありませんので、非常に心打たれました。
ありがとうございます。
投稿: akst | 2006.10.21 01:17
こんばんは。
この記事を読んだとき、ひどく狼狽しました。
anisさん以上のことは書けませんが、akstさんのブログを楽しみにしている者の一人として、これからも宜しくお願いします、とだけ記しておきます。
投稿: blue | 2006.10.24 22:37
blueさん
いやいや、すみません。
結局はこういう問題は本人の問題であって、本人で自分の人生の質を高めるほかないんです。
ただ、僕等人間は、社会的な生物であって、本人だけで生きているわけではないので、いろんな意味で大変ではあります。
でもまあ、ぼちぼちやります。
投稿: akst | 2006.10.24 22:49
今晩は。
その後体調はいかがでしょうか?
実は今朝、とある方から連絡があり、ここにコメントを残されたanisさんが今週初めに亡くなられたことを知りました。
ブログを通じてとてもお世話になっていた方なのでショックが大きく、今も激しい動揺を抑えきれません。
ごめんなさい、不安で仕方なく、akstさんのブログに愚痴をこぼさせてもらいました。
投稿: 三浦轍 | 2007.02.01 23:40
三浦さん
それは、私もとても残念です。
ここで、やさしくコメントを下さった方ですので、本当に悲しいことです。
うまく、言葉が見つかりません。
投稿: akst | 2007.02.02 11:00