「こんなはずじゃなかった」
こないだ、千葉のものすごい端っこのほうの駅の東京方面ホームでしらない爺さん(たいていの爺さんは知らない爺さんだ)に
「ここにいれば、○○にいく電車にのれるかい?」
と聞かれたので
「いかないよ、反対だよ」
といったものの、爺さんは「おれは××にいくんだ」とか「△△にいくんだ」とか、行き先が少し混乱していたので、よくよく話を聞いているとやっぱり頭の中でつながっていなかった。
別の知らないおばさんがやってきて一緒に話を聞くも、やっぱ家族に連絡しなくちゃいけない状態だ、ということがわかったので、(僕らは1時間に1本しかない電車がもうすぐ到着するタイミングだったので)駅員を呼んで保護してもらいました。
できれば、連絡先の書いてあるものを見つけられればよかったのだけど、勝手にかばんをまさぐるわけには行かないし、電車きちゃうので駅員にお願いしたのだけど、まあとりあえず無事だったし、駅ではみんな優しくしてくれたのでよかったです。
また別の日、近所の警察署の近くの踏切でバイクをとめて待っていると、知らない爺さんがフラフラと車道のほうにでてきて、僕の顔をみるなり
「オレ、うちに帰れなくなっちゃった。」
あわててバイクを降り、爺さんの手を引いて歩道につれていき、そこに座ってもらって話を聞くも
「この辺がおれの生まれ故郷なんだ」
「この神社(ちかくにあった)まできたもんだが、どうやって帰るのかわからない」
わりに会話がしっかりしているも、やっぱり話がつながらない。どうも訊いていると3キロほど離れたところから歩いてやってきたらしいが、今自分がどこにいるかもよくわかってないっぽかったのです。
「なんかおうちの連絡先とか書いてあるもの、ある?」
ときくと、財布から診察券の束をみせてくれた(それしかもってなかった)ので、これはしめたとおもい、1つの病院に電話をして、僕の名前と事情と電話番号を話し、ご家族に連絡を取ってみてくれないかと頼んだ。受付の女性は事情が飲み込めたらしく、数分後に知らない電話番号から電話がかかってきた。家族だ。
「すみません、タクシーにのせて帰してもらえますか?住所は…」
というので、あわてて書きとめ、流しのタクシーが捕まらないので、そらで覚えているタクシー会社の番号をかけてタクシーをよび、到着したタクシーの運転手に事情を説明して、住所と電話番号をメモしてもらって、爺さんにはタクシーに乗ってもらった。
タクシーを待つ間、爺さんは
「うちに帰れなくなるとは思わなかった」
「こんなはずじゃなかった」
「こんなのはじめてだ」
「情けないな」
といっていた。僕は「まあしょうがないよ。昔とは風景がかわってるんだし、それは爺さんのせいじゃない」とかいいながら待ったのだけど、結構おちこんでいるかとおもえば、ケロっとしていたりしてた。
まあ多分本人はおぼえてないのだろうけど、これがはじめてじゃなかろうとはおもったのですが、「こんなはずじゃなかった」というのは多分本当のことだろう。だれもが、老いて、それが現実的な問題として認識したときに思うはずだ。
この2回の老人との遭遇で、いくつか教訓として書き留めておこうか、と思うことがあります。
・ 迷った老人は迷うつもりで出てきてはないが、迷う。そのことを認識すると、うまくしゃべれなくなる。
・ だから、迷ってない、必ずうちに帰れるということを認識させて、おちつかせる
・ 連絡先や自宅の住所などが書いてあるものを持ってない場合がおおいが、たいてい病院の診察券はもっている
・ 病院に連絡して事情をはなせば、自宅に連絡してくれる。自宅と連絡さえつけば、どうとでもなる。
(もよりの警察に頼んでもいいし、来てもらうのもいいし、タクシーでだって帰せる)
・ 逆に言えば、住所や連絡先という客観的事実を、本人から聞き出すのは難しい
・ 身内にそういうことの経験がないと、すこしあわてる。逆に言えば身内でなくてもこういう経験をしておくと、身内がそうなったときにある程度あわてないで済む。
やたら迷った老人に話しかけられることが多いのは、なんでだろう?とかおもいますが、「だれもが、そうなること」なのだから、時間のあるときはできるだけ何とかしようと思います。
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